ステンドグラスバロック Stainde glass baqorue

モチーフへのこだわりが生み出す癒しと安らぎのオブジェ

「自分の頭の中にあるデザインを再現するだけなら誰にでも出来る。でも、クライアントの要望というものは、いつも好きに仕事をさせてくれる訳ではありません。束縛された条件の中で拘りを持ちながら、デザインする事こそプロたる所以だと思うのです。」
工房での作業中、周囲を諭すように臼井は話す。クライアントの要望は人によって全て違う。その度に我を通しているのでは、作品は仕上がらないという。臼井の持つ拘りとは、どの作品に対しても、クライアントの要望は聞いても決して妥協はしないこと。それは、何度も繰り返される作品のモチーフを決定する打ち合わせからも汲み取れる。
「要望を聞くというのは、クライアントの好みや彼らがどんなものを欲しているのかを知る為なんです。それが分からないと、お客様に満足して頂けない。ですから、私はモチーフを決定する段階から、決して手を抜きません。ヒヤリングを通して、その人ごとの要望をしっかり聞き出すのです。」
間違えたくないのは、臼井はクライアントのイエスマンではないということ。どんなものが欲しいのか判明した時点で、臼井はそこに独自の“ステンドグラス観”をぶつけていくのだ。デザインにしても、色彩にしても、クライアントが持つイメージを忠実に再現する為には、熟練された感覚から導き出される臼井独自の感性がスパイスとなる。
「技術というのは、誰でも練習さえすれば、ある程度の段階まで辿り着く事が出来ます。しかし、そこに作品に対する妥協があると、決して満足してもらえないのです。」と話す臼井が仕上げた作品で、クライアントからNGが出たことは一度もない。それは、彼が拘る作品のモチーフ決めを徹底しているからに他ならない。臼井の言う拘りとは、熟練された技術と作品に対する思いを併せ持つことなのだ。
現代建築において、ステンドグラスの持つ役割とは、作品自体が独立して存在するものではない。また、単に室内を装飾する存在でもない。建物自体と調和し、そこにある空間に集まる人々に、癒しと安らぎを与える“光のオブジェ”を創り出すのがステンドグラスの役割なのだ。
13世紀中期以降、発展して来たゴシック芸術の中で生まれたステンドグラス。これからも人々の心を癒す存在として、その役割を果たすはずだ。そして、臼井のような“拘り”を持つクラフトマンの思いは、未来永劫、伝統技術として受け継がれて行くに違いない。

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株式会社ぶんか社発行 「Class Living」vol.1 より記事内容・写真転載