重要文化財・世界平和記念聖堂
ステンドグラス修復
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世界平和記念聖堂は、1945年8月6日に広島に投下された世界最初の原子爆弾の犠牲になられた方々の追憶と慰霊のために、また全ての国の人々の友愛と平和のしるしとして建てられました。聖堂建設は1950年8月6日に着工され、5年の歳月を重ねて1954年8月6日に献堂されました。
それから60年以上の時を重ね、今回の建造物保存修理工事に伴い、主宰臼井の豊富な経験と実績、確かな技術が認められ、ステンドグラス修復工事を任されることとなりました。 -
解体
聖堂から取り外されたステンドグラスは、風雪に耐えた鉛線の腐食が激しく、その鉛線とガラスとの解体作業から始まりました。作業は、主宰臼井が経験値を生かしながら慎重に進めました。
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組み直し
解体されたガラスには、全て番号が貼られ、オリジナルと同様の順番に新しい鉛線とつなぎ合わせていく組立作業になります。なかには強度が弱いガラスもあり、細かい神経を使う作業となりました。
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ハンダ付け
文化財修復は、出来る限りオリジナルの状態に復元することを求められます。鉛線はオリジナルと同じ太さに、ハンダ付けは、当初「全面ハンダ付け」も検討されましたが、オリジナルに合わせた「点付けハンダ」での作業となりました。
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仕上げ
仕上げ作業に使うパテもオリジナルで使われていた白パテを使用しました。薬品による処理も神経と集中力が求められる作業となりました。
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修復前
修復前の画像。解体作業前に、修復パネル建造物窓番号、全てのガラスに番付け(通し番号)が貼られ画像を記録します。
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修復後
修復後の画像。修復前のサイズに番付け通り修復された修復パネルは、ガラス面のクリーニング作業も終えて画像を記録します。
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絵付けパネル修復前
外周部の鉛線など、部分的な腐食破損(または欠損)しているパネルは、出来るだけオリジナルの鉛線は残しながら修復を進めました。
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絵付けパネル修復後
欠損していた外周部の鉛線を修復。汚れていた焼き絵付けガラスも、クリーニングを終えたパネルは明るさを取り戻しました。
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現地補修(確認)
建物から取外しの出来ない破損パネルは、現地での調査後に、修復作業が検討されました。
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現地クリーニング
現地修復されたパネルは、建物内外部からガラス面のクリーニング作業を行いました。
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現地鉛線破損状態
現地調査で確認された鉛線欠損の画像です。サッシ番号と破損状態を記録します。
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現地鉛線補修後
現地修復された鉛線の画像です。全て「修復前」「修復後」の記録画像はデータ化され後世に残されます。
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完成
2019年4月。約2年間の工房内修復作業と現地修復作業を終えたステンドグラスが、聖堂内に復旧した画像です。カトリック教会の皆様からは「ステンドグラスが補修(クリーニング作業含む)されて、射し込む光が明るくなり鮮やかになった」と喜びの声をいただきました。今後、祈りの聖堂として更に歴史を刻んでいくこととなります。